■ [ 言葉を変えるだけで、あら不思議!? お洒落じゃない!(笑) ]
北欧家具は、木の素材感を大切にした家具が多いですね。それが特徴とも言えますが、その北欧の椅子によく用いられる素材がプライウッドです。
そのプライウッドは薄くシート状に削った板を交互に重ね合わせて、圧力を掛け成型されます。プライウッドは強度があり、むくの木材では難しいカーブが付けられるのが特徴です。
この素材は1920年代、30年代に家具の素材として使用されはじめて、戦後になって一般的に普及していきます。
当時、日本では合板、あるいはベニヤと呼ばれていました(過去形)。でも、ここ10年ほどの間には「合板だの、ベニヤ」とは言わず、「プライウッド」という呼び方が定着してきていますね。
私など古い人間(笑)ですので、未だに「合板は合板んん」「ベニアはベニヤぁぁ」と性懲りもなく呼び続けてひんしゅくを一部では買ったりもしていますが、その呼び方を世間が変えた背景としては、近年の、とりわけ90年代のお洒落な家具ブームというものがあります。
マスコミの煽りや貢献は大きく、イームズやヤコブセンがメディアで次々に取り上げられたり、トレンディードラマなどで、主人公の部屋にはまったく収入には不釣り合いなお洒落な輸入家具が、ところ狭しと飾られたりもしました。
その頃から安っぽさを感じさせる「合板」との呼び名は嫌われはじめ、英語の「Plywood」の音表記が頻繁に使われるようになりましたね。
「なぁ〜にがプライウッドでぃ! こちとら日本人でぃ。合板ちぁ合板で、ベニヤはベニヤでぃぃぃ!」との私の小さな抵抗も、あっという間に周囲の従順な対応性に消されてしまいました(笑)
まっ、それはそれとして、ここで皆さんが思っている一つの疑問に焦点を当てます。
「合板」と「プライウッド」、その高級感の差は何なのでしょう?
単なる「呼び方」の違いだけではありませんよね、もちろん。
そこでまたまた、私の話しの中では高い価格の悪役(笑)としてよく登場する「アントチェア(アリンコ)」と「セブンチェア」に出演頂いて、その謎を解明したいと思います。
デンマークの中心からはそう離れていない、とある家具工場。市内から5分も車で走ればそこはすでに深い森林の広がる一帯です。その森林の中で静かにたたずむ99年にできたこの工場では、「アントチェア」や「セブンチェア」などを中心にプライウッドを使用した椅子のみを製造しています。
その工程を覗いてみると、まず他の工場で薄く削られた木のシートがいっぱい運ばれてきています。
プライウッドの積層の内側には、木材を効率よく利用できますが、目の粗いかつら剥きにしたシートを、積層の表面には木材の目に沿って縦にスライスしたシートを使用します。
工場内では、力仕事というのに以外と腕の細い職人さんが木のシートを目を細めて見つめています。
シートの厚さは表面用が約0.6ミリ、内側用が約1ミリです。表面は椅子全体で一枚のように見えますが、実際は帯状の板を並べて継いだものです。
もともとの木材によって幅は異なりますが、大体3枚から6枚ほどの帯状の板を継いで一脚分ほどとなります。
前述出の職人さんがやがて、木目の似ているシートを選んで作業の開始です。0.6ミリの厚さにのり付けをして、合わせ、一枚に板に仕上げます。
そして、おおよその椅子の大きさになったシートを、それぞれの椅子の形の枠に沿ってカットしていきます。
この工場では以前、自動のカッティング機械を導入しましたが、間違いや故障が続出してしまいました。結局は間違いがなく、しかも機械より早いということで、職人さん仲間が手作業で作ることになりました。
なるほど、どうりで細い腕の職人さんもその同僚たちも、どこか誇らしげです(笑)
えへん・えへん。
次ぎに木目の方向が交差するように内部5枚、そしてその両面に表面用のシートをのり付けして重ねます。強度を増すために表面用ベニヤにはインド綿が裏打ちされています。
さて、クライマックスはプレスです。金型の間に挟まり、木材シートはやっと家具に変身を遂げます。それから160度の熱で2分ほど圧縮します。やがて上下の金型が開くと、ドドーン、見慣れた「アントチェア」や「セブンチェア」の形が現れてきます。
それから仕上げの作業ですね。表面を滑らかにするために表面に3種類のやすりをかけて、その後1週間ほど乾燥させ、ペイントや組立の工程のラインに運ばれていきます。
ペイントの前に木目の美しく出ているモノばかりを選り分けて、こちらは木目を活かした「クリア」仕上げになります。
最後の組立が終了しどんどん完成品が積み上げられると、搬出用ロボットが静かに近づいてきて、そしてそっと運び去っていきます。
ここで再び日本語での合板のイメージを振り返ってみると、主に建築資材として使われてきた合板は、むくの木材の代用としての意味合いが大きいことに気が付きます。
実際、そのままでは利用できない粗い木材を使った合板は、昔いたるところにありましたよね。そう言えば今は少なくなった感じがしますが、家具からちょっと飛び出た「ささくれ」が指や足に突き刺さって子供の頃、めちゃめちゃ痛い思いをしたことが誰でもあるのではないでしょうか。(おや?もしかして歳がばれるかも-笑)
ベニヤ(veneer)は本来合板の表面に着ける化粧板を意味しますが、合板という意味として広く使われるようになっていったのも、中の「安い素材を隠す」ということが背景にあるとも言われています。
ね、やっぱりそのイメージでいくと、「プライウッドは別格なもの」なのかなと思ったりもしますね。
この家具工場に限らずプライウッドの家具は、金型やプレス機といった設備とそのための高額な投資が必要なことがわかります。加えて、やすりの滑らかさやふちのあの独特のカーブ、ペイントのチェックなどはやっぱり人間の目がモノをいう世界です。
甘いところはマークを付けられ、細かい修正を行うこともやはり人間の手が行います。
工業設備と職人的な人間の技、これがうまく融合してあのプライウッドの家具たちが出来上がります。
と、めでたし・めでたしと言いたいところですが、これが一部の「プライウッド家具」が高額な言い訳として使えるわけではありませんね。
家具職人に限らず、職人が職人としてそれだけで食べていける時代はもう終わりを告げたのかもしれません。日本の典型的な使い捨て文化(私はそれは恥ずべき文化だと思っていますが)と、何よりも「中国」という巨大マンパワーを誇る国の存在が深く影を落としています。
巨大な世界を一市場とする現在のボーダレス世界では、もっともっと広い視野で見つめ行動できないと、世の中に必要とされるものでさえ消えゆく時代ですから、よほどの覚悟が必要であることは言うまでもありませんね。