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■ [ 独断専行・亭主関白・唯我独尊 ]

「私もそろそろ“城”というものを持ちたい。

事業もようやく軌道に乗り、胸を張って街も歩ける。貧乏をしたあの頃がウソのようだ。

そこで相談なんだが、家具は造り付けのモノは一切作らせず、一生モノのデザイナーズ家具を揃えたい。どうかそのコーディネートをお願いできないか。」


I C (インテリアコーディネーター)にとってはそんな夢(笑)のような商談が、めぐりめぐって何故か私のところに舞い込んできました。



その会社オーナー社長は、自宅を設計した設計事務所紹介の家具屋 I C を解任したのを手始めに、すでに2人もの I C を「能なし」と決めつけ、3人目の家具屋社長も全く手に負えず、それならばと、このような「偏屈おやじ」の扱い(笑)に慣れている私のところに連れてきたというわけです。


挨拶もそこそに、のっけから自宅図面を広げ、「ここはこう、あれはこう。」と言い募る会社社長に、同席している家具屋さんも困惑顔を向けています。


これだけのお金の動く商談にも関わらず、家具屋が困惑するのも無理はなく、それは家具選びというよりも、まるで自社の社員や部下のような思い入れで家具を見ています。

それも、一生自分に連れ添う部下としてです。


それならば設計事務所に家具を、それこそ好きなように作製してもらえばよい話しなのですが、家具はやはり家具を熟知した家具屋のモノに限るとの信念を持たれています。


何ごとにも相当凝るたちなのでしょう。

海外ブランドのデザイナーズ家具にしても自分で勉強されたのか、私も舌を巻くほどの知識を持っていました。

それを活かし自分で選べば全く問題はないとも思いますが、自分の選んだそれが正解なのか間違いなのか、恥ずかしいものではないのか、自慢できるモノなのかの自信が自分では持てずにいるようです。


そして最大のキーワードは「一生モノ」。

どうやらその辺りで他の人たちはさじを投げてしまったようです。


「本当に一生使えるのか? あんたはそれを保証できるのか?」と詰め寄られたプロたちは、会社社長の勢いに負けて「はい」の一言がどうしても言えなかったのでしょう(笑)


目の前の大金の商談に目がくらみ、とっさに「私にお任せ下さい」と言ってみたものの、相手は社会では海千山千の会社社長です。

「あんたでは話しにならん」と無能扱いされ、年若い I C がしっぽを丸める姿が目に見えるようです。


さて、あなたならどうしますか(笑)



「一生モノの家具が欲しい!」とは、別にこの会社社長に限らず、よく耳にする言葉です。特に婚礼家具を選ばれる際によく聞きますね。


その言葉を口にする人たちの意識の中には、一生モノ=高額なモノとの認識があるようで、ご両親に資金援助してもらう婚礼家具を選ぶ際には特に、例外なく皆さん考えられるようです。

この機会を逃すと、もう買えない(笑)なんてね。



しかしこの会社社長はどうでしょう? 

お金は十分持っている。

誰に遠慮することもない。

自分の好きなように選択できる。

奥様・お子さま言われるがまま。


こういった純粋な気持ちを持たれた方相手では、私も正直にならざるを得ません。




私は目の前にある図面をその社長から取り上げ、とっとと折り畳みます。


「社長、一生モノの家具なんて、世界中どこを探してもそんなモノはありませんよ。」


会社社長は目をむきました。

隣に座っている家具屋さんも(笑)。

家具なりインテリアを取り扱う者として、決して言ってはならない一言だったのでしょう。


しかし私にとってはそんなことはどうでも良いことです。

目的は一つ。

この会社社長に家具やインテリアを通し、感動を与え、喜んでもらうことです。



「○○さん、あなたの経営哲学は何ですか? それをお聞かせ下さい。」(ちなみにここで社長などと、肩書きでその人を呼んでは決してならないですよ。参考までに。)


人は安易に「一生モノ」の家具を欲しがりますが、ホントに一生モノの家具などあり得るのでしょうか?


家具の寿命とその人の寿命を照らし合わせれば、それなら一生モノという意味も分かります。

まさにデザイナーズ家具そのモノ自体が、一生モノと言えるでしょう。


極端な話しをすれば、ディスカウントストアで売っている980円の「カラーボックス」でさえ、その人が一生使おうと思えばその役割は十分に果たせます。

一定以上のブランドの家具ならなおさらです。


ソファなら革が破れれば張り替えればよいし、ワードローブやチェストなどの箱モノであれば、立て付けはすぐに直せる。湿気に気をつけてさえいれば、それこそ人の寿命より遥かに長く生きることでしょう。



しかし人はなぜ、10年も待たず自分が選んだ家具を見限ってしまうのでしょう。


それは家具自体が一生モノではないせいでしょうか? 

違いますね。 

いっつも同じ顔で、なにも言わず、黙ってその場にずっといるせいでしょうか? 

それもお門違いですね(笑)


単純な話しです。「その人の心変わり」です。言い換えれば、「飽き」が原因です。



昔の人が、例外なく婚礼家具を一生涯大事にするのは、その家具が高級だからではなく(もちろん高額であることも一つの要素ですが)、両親とあれやこれや言いながら家具を選んだ想い出、大好きな人との生活のある想い出、良い思い出も忘れてしまいたくなるような想い出さえも詰まっているから、手放せなくなるのです。


そしてその家具たちは、一様に磨き上げられ、使い古され、でもとっても良い表情をしています。


「一生モノの家具を買う。」 

この発想自体が「とんちんかん」です。

「一生モノの家具にする。」もしくは「なる」のです。


まずこの会社社長は、出だしからとんちんかんです。

一生モノの家具を探し回るのであれば、ご家族と一緒に探し回るべきなのです。

奥さんともお子さんとも、そして、ワイワイがやがや言いながら、あれやこれやケンカしながらでも、ご家族で探すべきなのです。



私は冒頭でこの社長の経営哲学を尋ねました。

素晴らしい内容です。

さすがここまで会社を大きくされた訳がわかります。


そしておもむろに私は、家族構成を聞き、あなたが今あるのは、すべてご自分の力なのか、それとも周囲の協力・理解・助言・励ましなどの有形無形力の上に築き上げられたものなのか、質問します。



この社長の考え方は、とんちんかんではあっても間違いではありません。

家具選びを自分でされているのは、しいて言えばご家族のためなのです。

泣くときも笑うときも、ずっと一緒に過ごされてきた伴侶のため、良いデザインの家具たちに囲まれて、子供たちには心豊かに育って欲しいと願うからこその厳しい目だったのです。


それならば、「答え」は私たちのような者ではなく、「ご家族」が持っているはずです。

「自分の選ぶ家具間違いではないのか。コーディネートは恥ずかしくはないのか。」

との考えは、世間に対するものではなくご家族に対する気遣いから生まれてくるものでした。


「それならば、高いお金を払ってまで私などに聞く必要はありません。ご家族の時間が合う曜日にでも、一緒に家具屋巡りをされれはよいでしょう。」


この時間中、私は一切「家具やインテリア」の話しはしませんでした。

もっとも家具の知識に関してはこの社長は十分すぎるほど持っていましたから(笑)



コーディネートというものは、良い家具を飾ればそれでOK!というものでは決してありません。

もちろんケースバイケースではありますが、知識があるから、モノを知っているから納得なわけではないのです。


そこには人が生活する空間が存在し、想い出となる風景が強く映し出されるものなのだと私は思っています。



後は、独断専行・亭主関白・唯我独尊のこの社長宅にお伺いし、奥さまとお子さまに話しを聞き、一緒に家具屋まで連れ出せばそれで終了です。




しかし、… (苦笑)

それは私の役割ではなくなりました。

以上の話し合いが文章のように和やかな雰囲気で行われたわけではありません。

口べたな私はストレートなモノ言いしかできませんので、終始お互い怒鳴りあいのような感じで、「殴り合いになるのではないか」と同席された家具屋さんも心配し通しだったようです(笑)




数日後、この会社社長の商談が円満解決した旨、家具屋社長より連絡がありました。

希望にないモノは、家具屋社長自ら図面を引き、製作したようです。


しめて総額二千万弱。私は数百万の利益を棒にふったようです(泣笑)



「娘とこんなに話しをしたのは初めてだ」。ポツリとその社長は、でも嬉しそうに言ったそうです。


この社長もやはり半端ではありません。

喧嘩はしながらでも自分の悪いところに気付き、良いところは実行したようです。

「男」とはこんなものです。





この時期になぜこんな理屈っぽい話しを持ち出したのか。

実はこの話しには後日談があります。

先週のバレンタインデー、この社長の本名で、まるで嫌がらせとしか思えないほどの大きさのチョコが私のもとに届けられました(笑)

そこにはカードが添えられていて、お子さんの字でしょうか、「ありがとう」の幼い文字が書かれていました。


どうです? 泣けるでしょ(笑)


さて、3月14日には、どんな仕返し(お返し?)をしようか、今から頭を悩ませています。


どうやら私も、人によって生かされているようですね。




それでは。





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★コルビジェは住宅を、「住むための設備」と呼び、家具をその「機械」と
 表現しました。 「一生モノ」のもう一つの答えがここにあります。
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 ―ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエ、F.L.ライト    」

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