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□ 映画の中のソファが語るライフスタイル

「映画の中の家具」シリーズ??の追加版です。

映画の中では、実に多種多様な人生が繰り広げられています。
個性やライフスタイルが色濃く反映されたインテリアに出会うことも少なくありません。
またまたここに幾つか挙げるのは、ソファがとても印象的なシーンです。
画面に溶け込んでいるようでいて、ソファは場面場面で雄弁に登 場人物のバックグラウンドを語っています。
ビデオを借りるときの参考にしてみて下さい。

◆「恋する惑星」 
94/香港 ・監督 ウォン・カーウェイ
・出演 トニー・レオン、フェイ・ウォンほか


一瞬だけすれ違う、二つの別々の恋物語。
ファーストフードショップの店員フェイと、店に来た警官633号との出会いが、二つ目の物語の始まりです。
恋人に振られたばかりの633号。彼を好きになったフェイは、彼の部屋にこっそり忍び込み、少しずつ自分好みに変えていきます。
ある日彼の部屋の入り口で二人が鉢合わせしてしまうシーンがあります。足がつってしまった彼女を部屋に入れ、ソファに座らせてマッサージしてあげる彼。いつしか彼女は寝てしまい、彼も隣に座ったまま、まどろんでしまうのです。
香港映画特有の疾走するような テンポ感に満ちた映画の中で、このシーンは不思議に安らげる場面 です。
クッションが沢山置かれ、使い込まれた味のある茶色いソファ。くつろげる感じが気に入っていたのか、ここは彼女の改装の手が加わらず元のままです。
「夢のカリフォルニア」のBGMがよく似合う気だるい心地よさ。
ばつぐんなソファの演出です。


◆「ドラビング・ミス・デイジー」 
89/米 ・監督 ブルース・ベレスフォード
・出演 ジェシカ・タンディ、モーガン・フリーマンほか


1948年のアトランタ。
ユダヤ人の裕福な未亡人デイジーと黒人のお抱え運転手との、25年にもわたる交流が綴られています。
頑固で自尊心の高いデイジーが、正直で飄々としたホークに少しづつ心を開いていく様子が、淡々としたエピソードで積み重ねられ心に染み入ります。
デイジーが住んでいるのは、手入れのよく行き届いた、南部らしさの香る上品な邸宅。
陽がさんさんと降り注ぐサンルームには、籐のソファとテーブルがあります。家具はすべて白が基調で、カーテンは小花柄。清潔感と品のよさが漂う、まさに彼女好みの古きよき憩いの空間といえそうです。
ここのソファで新聞を読んだり、ラジオから流れるオペラの調べにうっとりとしながら刺繍に勤しむ彼女。ふだんホークや息子に小言を言う姿とは打って変わったくつろいだ彼女の表情です。
ソファを中心とした優雅な空間にデイジーが溶け込んで、どこまでもゆったりとした時間が過ぎていきます。


◆「バクダッド・カフェ」 
87/西独 ・監督 パーシー・アドロン
・出演 マリアンネ・ゼーゲブレヒト、CCH・バウンダーほか


乾いた砂漠を吹き抜ける主題歌「コーリング・ユー」。
目や耳に焼きつくシーンが多いこの映画の中でも印象的なのが、二人のヒロインの出会いの場面です。
モハヴェ砂漠のはずれにあるさびれたモーテル「バクダッド・カフェ」。
女主人のブレンダのまわりには、勝手で怠け者の家族とのいさかいなど腹の立つことばかり。
事務所の外に出したソファに座り込んで、やるせなさに涙します。
と、そこへトランクを引きづりながら歩いてくる奇妙な女性が、胡散臭そうな目を向けるブレンダですが、やがてこのジャスミンとの間に友情が芽生えていきます。
砂漠の色と同化したような、くたびれた一人掛けソファ。
ここではソファはくつろぎよりむしろ寂寥感を漂わせています。
やるせなさを風に吹き飛ばして麻痺させてしまいそうな気だるさも含んでいます。
そういえば、客の 一人である無表情な女性デビーも、このソファで「ベニスに死す」を読んで いました。


◆「ぼくの伯父さん」 
58/仏=伊 ・監督 ジャック・タチ
・出演 ジャン・ピエール・ゾラほか


定職を持たず気ままに暮らすムッシュ・ユロと甥の少年ジェラールとの交流が、ゆったりとした、のんびりとしたリズムで綴られています。
ムッシュ・ユロの住む下町の古いアパルトマンと、ジェラールの住む郊外のウルトラモダンな邸宅が、見事なまでに対象的です。
ムッシュ・ユ ロと、その姉夫婦であるジェラールの両親との本質的な違いがそのまま表われています。
庭の噴水からキッチンでの調理まで何もかもスイッチ一つ、自動化された家が、ジェラールは窮屈で嫌いです。この家をひっかきまわしていく
ムッシュ・ユロ。義兄の堪忍袋の緒が切れたのは、ソファを横に倒してその上で寝ている彼を発見したとき。
一見カッコよさげだけど、実は使いにくいものがこの家には多く、可笑しくも風刺のきいたシーンになっています。
とはいえ、監督・主演のJ・タチが54年にニューヨークへ行った際の体験を元にしたというインテリアは、今見ても新鮮で必見です。
誰が見ても「良い」と思えるインテリアの根本は、今も昔も変わらないんだなぁ、と実感します。


◆「浮き雲」 96/フィンランド
・監督 アキ・カウリスマキ
・出演 カティ・オウティネン、カリ・ヴァーナネンほか


ヘルシンキの老舗レストランの給士長イロナと、市電の運転手である夫ラウリ。
折からの不況で夫はリストラ、妻のレストランも閉店の憂き目にあいます。
若くはない二人の職探しはままならず、次々に不運 な出来事に見舞われます。そんな状況でも二人の間には終始温かいものが通っていて、言葉少なながらもちょっとした仕草や目線がしみじ みといい味をにじませています。
二人のアパートのリビングは、明るい青の壁に濃いサーモンピンクのソファがマッチした気持ちのいい空間。
ソファも本棚もテレビも皆ローンの返済中なのですが、夫は快適な環境をつくって妻を喜ばせようとします。
優美にフォルムの上質そうなソファ。
多少無理をしても一生モノの家具を揃えていこうとするのは、彼の性格とも、国民性とも言えるのではないでしょうか。
後半ソファもテレビも没収され、床に座って新レストラン計画を立てただけに、それが成功する急展開のハッピーエンドには、心から祝福を送りたくなります。


□ あとがき

日本のドラマ(特にワンパターンな恋愛ドラマ)にある、その主人公の収入を考えると、全然バランスが取れていない部屋のインテリアってありますよね。
「いったい、ナンボの給料を貰ってるねん。」
「その若さで年収1.000万以上かっ?」っていう疑惑アリまくりの部屋です(笑)。
以前に比べその度合いはまだマシになりつつありますけど、あの家具入れて毎晩飲みに出て、ドラマの内容以前に、「ちょっと違うんじやないのっ」って突っ込みだすと、もうストーリーなんかどうでもよくなってしまいます。

だけど映画は、やっぱり違います。
特に欧米の映画は、そのバランスが実に良く計算されていて、それでいて「おっ」と思わせる家具・インテリア達。
今回特集したソファ一つとっても、その人の背景が滲み出るような演出をしています。
憧れは、作為プンプンの日本のテレビドラマからではなくて、是非映画から吸収してほしいものです。
そうすると、一歩も二歩も本物に近づきますよ。
皆さんも、印象に残った映画の中で使われている家具・インテリアを教えて 下さい。

それでは、又。

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